2019年 06月 03日
「ヤナギダアキラ最期の日」
「ヤナギダアキラ最期の日」
無事に終了致しました。
沢山のお客様。
素敵な共演者&スタッフの皆様
素敵な作品。
この作品に参加出来て幸せです。
皆さんに感謝感謝です。
山田さんからも、素敵な感想を頂きました!
ありがとうございます✨
渡辺
目白の古民家ギャラリー「ゆうど」で上演中の「SPACE U」第25回公演「ヤナギダアキラ 最期の日」(作=畑澤聖悟、演出=大島宇三郎)が抜群に面白い。
舞台は青森・十和田湖畔にあるホスピス。
90歳近い老人、柳田明(大島宇三郎)が入院している。付き添うのは「孫」だという智英(チエ=まどか)。
そこに、元ヤクザの組長・村岡(山口嘉三=劇団昴)が妻・真由美(金田あつ実)と子分の佐藤優(マサル=植松洋)を伴って現れる。このホスピスの最上級の部屋を予約したというが、病院側の手違いで部屋が空かず、看護師・東出(渡辺真弓)と看護師長・清原夏繪(百元夏繪)は右往左往。
さらに、フィリピンから木崎五郎(宮川智之)がやってくる。明が現地の新聞に公告を出し、呼び寄せたのだ。
彼は明の戦友で戦時中に現地で苦楽を共にした男らしいが、どう観ても20代。年齢が違い過ぎる。
木崎とは何者なのか。そして智英はなぜ木崎を知っているのか。
謎めいた三人の関係が次第に明らかになっていく。
これはもう大大大傑作だ。
観ている間中、興奮を抑え切れなかった。
こんな傑作を畑澤が書いていたとは知らなかったし、過去に上演しているのに観ていなかった。なぜこんな傑作をどこも上演しないのか。この作品に目をつけた大島宇三郎の慧眼に感心する。
今回の舞台、ホンの面白さは言わずもがなだが、それを具現化するキャスト、演出がそれを凌駕するくらいの素晴らしさ。
「ゆうど」は畳敷きの部屋で客席は30~40くらいの小さなスペース。そこをホスピスのデイルームに見立て、役者の出入りも玄関伝いの狭い出入り口を使うなど工夫している。
まず、台本の面白さには久しぶりに感嘆した。
ネタバレと言わせるので多くは書かないが、いわゆる人魚伝説=八百比丘尼伝説をモチーフにしており、戦時中のフィリピンでの日本軍の蛮行、飢餓という史実を埋め込み、なおかつ愛の永遠性という普遍性を持たせた。
芝居を観ながら「小説化してブラッシュアップすれば小松左京も真っ青な作品になる。SF大賞もラクラクではないか」とか、「プロットをハリウッドに持ち込めばスケールの大きいハリウッド映画になる」とか、もう様々な妄念が頭に浮かんだ。ハリウッド映画らしいラストシーンまで目の前に浮かんでしまった。
こんな大傑作を2010年上演を最後に今まで埋もれさせてきたのか、渡辺源四郎商店。もったいない。
私が映画プロデューサーならこの作品を絶対、映画化している。
舞台に戻れば…、この作品の要となるのは明と智英を演じた大島とまどか。その謎めいた関係が次第に観客に明らかになっていく過程で内面の変化が表情の変化となるわけで、まどかの細やかな表情の演技がいい。それを静かに受け止める大島の盤石の芝居。
入院患者で元中学教師という余命3カ月の宮田を演じた平山享の飄々とした演技、彼の語る十和田湖畔の乙女の像が10万年先、人類が滅びた後も立ち続ける、という科学に基づく推論のロマンチシズムと怖さ。
おそらく羽振りの良さも末期がんのために黒い業界からも見放され、最後に残ったのは子分と妻だけというヤクザの親分の凋落を見事に表現した山口、その子分で奇矯な役ながら、陰で親分を裏切るマサル役の植松のコミカルな演技が笑いを取る。複雑な環境で育ったであろう姐さん役の金田あつ実もいかにもヤクザの妻に見える。
天衣無縫、場を明るくする渡辺真弓、さいたまゴールドシアター出身の百元の無手勝流の芝居がいい。
謎めいた男・木崎の煩悶、永遠に続く孤独と深い悲しみを宮川が好演。端正な演技で魅了する。
演劇ってどこでもできる。1000人以上のキャパの大舞台の豪華さもいいけど、庭に面した小さな畳敷きの小スペースで上演される芝居の密度にこそ演劇の楽しみ、面白さがある。
終演後、打ち上げでウサさん、まどかさん、山口さんらとあれこれお話。
山口さんは昨年11月の昴公演「評決」に出ている。実直で気さくな俳優。まどかさんも渋谷ルデコで旗揚げ公演を行った。
ところが、去年11月末から12月にかけての記憶も記録も真っ白。高取さんが亡くなり、もう一人、大事な先輩であり友人である演劇評論家のTさんが倒れたのだった。
人の死にあれほど衝撃を受けたことはないし、Tさんの不運にも涙した。今もTさんは回復しないままだ。
その間に観た芝居9本がほとんど記憶から抜け落ちている。改めてここで言えば、その間の公演にFBで言及しなかったのは他意のないこと。書く精神状態ではなかったから。
上演は28日(火曜)マチネまで。
by spaceu
| 2019-06-03 18:31
| 公演